「私の相方は、緊張すると本当に碌に口も利けなくなってしまうものですから。失礼がありましたらお許し下さい。作品に関する質問でしたら何なりとどうぞ。分かる範囲で私がお答え致しますし、しばらくして緊張がほぐれれば、オルセンもそれなりにお答え出来るかと存じます」
「・・・ジャン・ルイ」
しかし、この介入をオルセンは必ずしも諸手をあげて歓迎したわけでもなさそうだった。アンリから引き離してもらって明らかにホッとしているものの、相方を呼ぶ声音には非難の色が籠もっている。
確かにジャン・ルイの態度は不躾ではあった。だが、当のアンリは上機嫌なのだから始末に負えない。
「ずるいわ、アンリ。魔法使いを二人とも連れ出してしまって」
「マリー・ルイーズ・・・・」
ある意味、三竦みとも言える膠着状態。そこを無邪気に割って入ってきたのは、着物姿も麗しいマリー・ルイーズであった。夫である田中氏と仲良く手をつないでの登場である。
主賓が移動してきたので、広間の注目はいやがうえにも集まり、たちまち人垣が幾重にも出来上がってしまった。白百合のようなオルセンを、ひっそりと連れ出したつもりのアンリの当ては完全に外れた恰好となった。
もっとも、ジャン・ルイが割って入ってきた時点で、そんな思惑は霧散したわけだが。
そして二人芝居が三人芝居になり、そこへまた登場人物が更に加わって、事態は複雑化の一途を辿る。アンリにとっては、願っても無い賑々しい展開だ。
(『両手に花』どころか、花園に紛れ込んだ心地だな)
この場合、博士にとっての花園は妍を競うように着飾った貴婦人方ではなくて、見目麗しい青年達を指す。
アンリの射程距離から言うなら、マリー・ルイーズの夫、田中氏もまだまだ青年の範疇なのである。
「私も夫も、二人の魔術師が作品について語るなら喜んで聞きたいと思っているのよ。ねえ、哲(サトシ)?」
「それからもちろんアンリ・フロレスタン博士のお話もだよ、マリー・ルイーズ。お仲間に加えて頂けますか?博士」
「喜んで。篠笛とフルート、素敵でしたよ。もっと聞きたかった。私もサトシとお呼びしても?」
挨拶の軽い抱擁を交わしながら、アンリが卒なく賛辞を呈すると、田中氏は照れ笑いを浮べた。
「それでは私も、妻に倣ってアンリとお呼びします」
「是非そうして下さい。お二人とも新婚の若夫婦と言っても通りますね。実に若々しく華やかで美しい。とても三人の子持ちとは思えない」
「あら。私たち、子供は二人よ」
そう答えて、マリー・ルイーズはすぐに思い当たった。
「ジュジュを私たちの子供だと思ってるのね、アンリ。確かにうちのアレックスとは双子みたいにそっくりだけど、従兄弟同士なのよ、あの子たち」
「お気になさらず。よく間違われるんです」
夫婦は顔を見合わせて、くすくすと笑いを零した。
「従兄弟・・・ということはロクサーヌの。私はてっきり双子の兄弟だとばかり思っていましたよ。そうですか、それは失礼。それにしてもお二人とも本当に若々しい。マリー・ルイーズは、少女の頃と少しも変わっていませんよ。そうでしょう、みなさん?」
アンリが周囲に同意を求めると、たくさんの頷きがさざ波のように返された。
「まあ。やめて、アンリったら」
咎める口調ながら、マリー・ルイーズは満更でもなさそうである。
満座の中で『美しい』、『若々しい』と言われて、怒り出す女性はまずいない。
腐母(大人なら母でなくてもよし)の会 |
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Date:2008/05/13
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Thema:自作BL連載小説
Janre:小説・文学